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2.2.2 災害予防計画における問題点
災害予防計画における主要問題点は以下のとおりである。
問題点1:防災ビジョンおよび想定される被害程度にリンクしていない
問題点2:予防対策の到達点が整理されていない
問題点3:普段の業務において使う計画になっていない
問題点4:重要度、緊急度の視点から予防対策が整理されていない
問題点5:応急対策需要の主要発生源である住家被害対策に具体性が乏しい
問題点6:人的資源の発掘・活性化の方策に具体性が乏しい
(1)問題点1:防災ビジョンおよび想定される被害程度にリンクしていない
2.1の(3)で述べたように、防災ビジョンを記載している地域防災計画が少ないため、それにリンクした計画も当然少ない。
一方、当該地域で想定される被害程度を記載している地域防災計画は全体として多くはないが、防災ビジョンほどではない。しかしながら、想定される被害程度は記載しているものの、予防対策(災害予防計画)でもって、それのどの位の部分をカバーし、どの位の期間に、どのようにして、どの程度まで変えていこうといった戦略、戦術が示されていない。
表14は、阪神・淡路大震災の被害データを人口・世帯数で読み替えて算定した、市町村モデル人口(世帯数)別の想定被害量を示したものである。
この表に示された想定被害量は、応急対策の改善によりどの程度軽減しうるであろうか。発災初期に迅速・的確に対応できるならば、ある程度、想定被害量を小さくすることは可能であろう。火災(件数)のように発災後の人的・社会的対応が大きく影響する項目については、応急対策の改善によってかなりの減少が可能となるかもしれない。しかし、大部分の項目については、応急対策だけではその減少幅には限界があることに容易に気づかれるであろう。
たとえば、阪神・淡路大震災の死者(震災後の病死などは除く)の9割以上は、ほぼ即死状態(15分以内の死亡)であったといわれている。このことは、死者の9割程度はどんなに応急対策を改善しても減らすことができないことを意味している。すなわち、ほぼ即死状態の死者を無くすには、予防対策で対応する必要があることを教えている。
このように、想定被害量を求めた場合も、応急対策(の改善)でどこまでをカバー(=リンク)し、予防対策(の推進)でカバー(=リンク)するのはどこまでといった検討が必要である。この作業により、災害予防計画の目標だけでなく、その重要性も明瞭になってくる。その結果、実践的な戦略・戦術の立案が可能となる。
(2)問題点2:予防対策の到達点が整理されていない
(1)で述べた戦略・戦術を練るための前提として、予防対策の現在の到達点を正しく把握・評価しておく必要がある。すなわち、「現状では対策はここまで進捗し、ここまでの安全が担保できているが、まだ、○○○の危険が存在している」といったことである。
実際には、「現状では対策はここまで進捗」といった内容を記載している地域防災計画は比較的多いが、それを踏まえて、「ここまでの安全が担保できているが、まだ、○○○の危険が存在している」と分析しているものは少ない。

 

 

 

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